10行目の「同処分の取消訴訟」を「別件所得税更正処分取消訴 訟」と改める。
(7) 同頁11行目の「別件所得更正処分」を「別件所得税更正処分」と改め る。
第3 当裁判所の判断 1 本件過納金の相続財産性 (1) 相続税法は,相続税の課税財産の範囲を「相続又は遺贈により取得した 財産の全部」(2条1項)と定めており,相続税法上の「財産」とは,金銭 に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいい(相続税法基 本通達11の2−1,甲13の9),物権,債権,債務のような現実の権利 義務に限らず,財産法上の法的地位も含まれる(甲37)。
また,相続税の納税義務の成立時点は,「相続又は遺贈による財産の取得 の時」(国税通則法15条2項4号)であるところ,相続人は相続開始の時 から被相続人の財産を包括承継するものであり(民法896条),かつ,相 続は死亡によって開始する(民法882条)から,納税義務の成立時点は, 原則として,相続開始時すなわち被相続人死亡時である。
(2) 本件過納金の原資はAが拠出した納付金である。
Aが生前別件所得税更 正処分取消訴訟を提起し,Aの死亡後,被控訴人がその訴訟上の地位を相続 により承継したところ,別件所得税更正処分の取消判決が確定し,本件過納 金が被控訴人に還付されたものである。
取消訴訟の確定判決によって取り消された行政処分の効果は,特段の規定 のない限り,遡及して否定され,当該行政処分は,当初からなかった状態が回復される。
この取消訴訟の原状回復機能はすべての取消訴訟に共通する最 も重要な機能である(乙5,8,10の2,乙15,16)。
また,取消し の遡及効(民法121条)の原則とも整合する。
被控訴人は,原状回復は取 消判決の拘束力によって生ずるものであり,形成力によるものではないとし て,取消判決の遡及効を否定するが,異説であって採用できない(乙13)。
したがって,別件所得税更正処分も,同処分の取消判決が確定したことに よって,当初からなかったことになるため,判決により取り消された範囲に おいてAが納めた税金が還付され(国税通則法56条),Aが納税した日を 基準時として計算した日数に応じて法定の利率を乗じた還付加算金が支払わ れるのである(同法58条1項,乙17)。
これは,訴訟係属中に相続があ った場合でも変わりはない。
すなわち,別件所得税更正処分の取消判決が確 定したことにより,Aが別件所得税更正処分に従い納税した日に遡って本件 過納金の還付請求権が発生していたことになる(乙10の1)。
別件所得税 更正処分の取消判決の遡及効を制限する特段の規定も存在しない。
ちなみに,国税通則法74条1項は,還付金等に係る国に対する請求権の 消滅時効の起算日を「その請求をすることができる日」と定めており,本件 については,当該日は別件所得税更正処分の取消判決の確定日となり,本件 過納金を納入した日と異なるが,これは行政処分の公定力の効果によるもの であって,前記判断と何ら矛盾するものではない。
(3) 以上のとおり,本件過納金の還付請求権は,Aの死亡時にAの有してい た財産に該当し,相続税の対象となるから,本件更正処分は相当であり,取 り消す理由はない。
2 被控訴人の主張について (1) 被控訴人は,本件過納金の還付請求権は,別件所得税更正処分の取消判 決確定により初めて発生し,Aの相続開始時には訴訟係属中でまだ発生して いなかったのだから相続財産を構成せず,原始的に被控訴人に帰属すると主張する。
しかし,無効な処分に基づき最初から法律上の原因を欠いていた利得であ り,納税者がただちに不当利得としてその還付を求めることができる誤納金 と異なり,過納金は,有効な行政処分に基づいて納付ないし徴収された税額 であるから,基礎になっている行政処分が取り消され,公定力が排除されな い限り,納税者は不当利得としてその還付を求めることができない(甲2 2)という意味で,租税手続法的に見て,取消判決の確定により還付請求権 が生じると言われるだけであって,租税実体法上は納付の時から国又は地方 公共団体が過納金を正当な理由なく保有しているのである(乙3)。
したが って,取消判決の確定により行政処分が取り消されれば,過納金及びその還 付請求権も納付時に遡って発生していたことになる。
当該行政処分の公定力 も排除される。
過納金の発生時期について,確定判決の効力が生じた時にそ の発生が「認識される」と,区別している文献もある(乙4,11,17)。
(2) 被控訴人の主張によれば,別件所得税更正処分が重大かつ明白な瑕疵に より無効なのか,取り消し得べき瑕疵を有しているのかは,いずれも確定判 決を待たなければ判明しないにもかかわらず,無効判決だった場合は還付請 求権は納付時に発生しているので相続財産となり,取消判決だった場合は相 続財産から外れることになる(乙9,12)。
このように,更正処分の瑕疵 の重大性,明白性如何により相続財産性が左右されるのは相当ではない。
また,取消判決の確定時にAが存命であれば,当然本件過納金は相続財産 となったにもかかわらず,訴訟係属中にAが死亡したという偶然のできごと によって,同じ本件過納金が相続財産とならなくなる(乙12)。
しかし, このように偶然のできごとによって相続財産性が左右されるのは相当ではな い。
さらに,本件過納金は,そもそもAが納付したものであり,被控訴人に還 付されたのは,別件所得税更正処分取消訴訟の訴訟手続を被控訴人が相続により受継したためであるにもかかわらず,同訴訟の勝訴の結果得た実体的な 権利である本件過納金の還付請求権を被相続人の原始取得であると主張する のは背理である(乙12)。
(3) 被控訴人は,控訴人が還付加算金を雑所得として所得税課税の対象とし ているのは矛盾であると指摘する。
しかし,還付加算金の性格は,還付金に対する利息であるので,還付金そ れ自体は相続税の課税対象となる財産に含まれるとしても,その還付金に附 帯して法令の規定に基づいて生ずる加算金について,相続税の課税対象とな る財産に含めるべきであるとする解釈を採るべき必然性はない。
所得税基本 通達35−1は,還付加算金については,利子所得には分類されない各種の 利子と同様のものとみなして,雑所得としての取扱いをすべきと明示してい るのだから,控訴人の取扱いに矛盾はない(乙13)。
(4) 被控訴人は,国税通則法施行令23条1項の「還付金等が生じた時」と は,課税処分が判決により取り消されたことにより生じた還付金等の場合は, その確定判決の効力が生じた時とされている点(国税通則法基本通達の57 条関係の9−(3),甲12の6)を指摘する。
しかし,これは,還付金が生じたときに還付すべき相手方に納付すべき国 税がある場合に,還付によらず他の国税に当該還付金を充当すべきとされる 場合において,他の国税に充当するに適した状態の還付金が発生する時期を 定めたものであり,取消判決の遡及効及びこれに基づき還付金が納付時に遡 って発生することを否定するものではない(乙13)。
(5) 被控訴人は,取消訴訟の訴訟物は当該処分に係る違法性一般であって, 取消しに基づく還付金の還付請求権の有無ではないから,相続財産の中に還 付請求権は含まれないと主張する。
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